<大まかな流れ>
さあBMCにむけて実験をしましょう!!
・・・といきなり言われても困ってしまうと思います。
ここでは一般的な流れを説明していきます。
① 実験の前に
まずは実験をしなければいけませんが、残念ながら学生だけのチカラでは実験をすることはできません。
そのためには学生に実験をさせてもらえるところを探さなくてはいけません。
具体的には基礎医学の教室や各医局に伺って、テーマに沿った実験をさせてくださるかを聞いて回ります。
その際には
・どのような実験をさせてもらえるのか
・どのくらいの期間がかかるのか
・いつ実験をするのか(放課後か、週末か、夏休みかなど)
・実験をするにあたってどのような知識が必要か(背景や実験方法など)
などをうかがいます。
また
・BMCについての説明
・参加する学生の人数
などを先方に伝えることも大切です。
そしていくつか候補が集まったあとで、参加メンバーの興味や実験に割ける時間などを考慮して、お世話になる先を決定します。
(個人的な経験としては、「一カ月間、毎日来てほしい」と言われたところは選べませんでした)。
② 実験開始
基本的には仕事場にお邪魔して実験させてもらうわけですから、事前に自分たちで学習できることは済ませておくなど出来る限りのことはしておきましょう。
学生側の熱意が先生方を動かします!!
③ 実験の後は
最後に実験結果をプレゼンテーションする準備をします。
発表形式はパワーポイントを用いた英語でのオーラルプレゼンテーションになりますので、スライドと原稿の両方を準備しなければなりません。
本番の少なくとも一か月前までには②までを終わらせておいたほうが、じっくりと発表の練習ができると思います。
以上が大まかな流れとなります。
ここから先は、より良い発表のヒントとなるようなことを書いていきたいと思います。
<研究の方向とは>
そもそも通常、研究とはどのように計画して進めていくものなのでしょうか?
全ての研究というのは論文を書くために行います。
論文となって世の中に出て、初めて価値が生まれます。
逆に言えば、どんなに素晴らしい研究でも論文にならなければ意味はありません。
(しかも世界中の人々に内容を知ってもらうためには「英語で」論文を書くことが必須となります)
~テーマ~
論文を書くためにはまずテーマを決めなければなりません。
そのテーマとは、日々の臨床現場からの疑問であったり、自分の専門分野における未解決の問題であったりします。 また分子レベルから大規模な患者さんを対象にした研究まで、そのスケールも様々です。
しかし共通して言えることは、「その内容が他のだれもまだ発表しておらず、またその内容が医学の進歩に貢献できる(と自分は信じている)もの」でなければならないという点です。
医学において重要な発見をすることは大変素晴らしいことであり、世界中で日々研究が行われています。
~実験の選択~
次にテーマを決めたらどのような実験が必要か考えます。
テーマというのは仮説です。ですからそれを証明するための実験を行わなければいけません。
分かりやすくするために例を挙げて説明しましょう。
「ある薬剤が、ある疾患において保護効果を示す」という仮説を思いついたとします。
ではこの仮説を証明するためにどのような実験を行わなければいけないのでしょうか。
いきなり人で実験することはできませんから、まずは細胞や動物実験レベルで薬剤の保護効果を検証することとなります。
実際にその疾患モデルにおいて保護効果を示すことを実験で確かめなければなりません。ではその結果だけで論文になるのでしょうか。
残念!! それだけでは良い論文にはなりません。
●その薬剤が分子レベルでどう働いたから保護効果を示すと考えられるのか
●疾患モデルというのは完全にその疾患を再現したわけではありませんから、別の疾患モデルにおいても保護効果を示すのか
(とある細胞が死ぬ疾患において、その細胞が死ぬモデルは複数存在する場合があります)
●その薬剤がある分子を動かすとして、それが保護効果と関係あるのか
(無関係に動いているだけかもしれないので、ノックアウトを使うなどして証明する必要があります)
など、少し考えただけでもたくさんの証明しなければいけないことが思い浮かびます。検証方法自体の有効性が問われる場合もあります。
論文を読んだ人が納得してもらえるだけのデータを揃えるということが、研究者が日々行っていることなのです。
決して自分の興味の赴くままに無計画に実験しているわけではないのです。
(中にはそういう人もいるかも知れませんが)
他にも
・○○は▲▲レセプターのリガンド(結合物質)である
・新しい手術方法は従来のものより治療成績が良い
・◆◆をたくさん食べる人はそうでない人よりも寿命が長い
など、先ほども述べましたが分子レベルから始まって、無限のテーマが存在するのです。
そして規模が大きくなればなるほど、複数の因子が絡めば絡むほど、テーマを証明することは困難になっていくことは想像に難くないでしょう。
(◆◆をたくさん食べるかどうか以外で、まったく同じ生活をしている人は存在しません。それらの影響はどう考慮すればよいのでしょうか。)
逆に分子や細胞レベルなら、実際の人間とはかけ離れていたとしても、シンプルな分証明はしやすいのです(条件を同一化しやすいのです。さらに動物になると個体差というものが生じてきます)。
そしてそういった研究の積み重ねが、動物レベルから実際の患者さんレベルへとつながっていくのです。
~論文~
そしてテーマを証明するために必要であると思われるデータがそろった段階で論文を書きます。
論文にはその分野において今までに既に分かっていることや、その背景において今回明らかにしたことの意義などを書いて、自分の研究の価値をアピールしなければいけません。(イントロダクション)
次に一般的には実験方法と結果を書きます。
そして最後に結果から言えることや予想できること、検証できなかった項目についての考察、さらにはこの結果が今後どのように発展していける可能性を秘めているのかなどを、論理的に納得できる形で述べなければいけません。(ディスカッション)
さらに論文を提出した後にはその分野の専門家による審査があり、そこで指摘された項目について追加実験をするなりして、納得させる必要があります。
こうした経緯を得て、その論文は初めて世に出るのです。
(ちなみに学会発表というのは中間報告みたいなものです)
<よりよい発表のために>
先生方が普段やっていることがお分かりいただけましたでしょうか。
このことを踏まえたうえで、より良い発表をするためにはどうしたらよいのか、最後に考えたいと思います。
本来ならば学生が初めから研究内容を考え、実験をすることが理想のはずです。
しかし現実的には学生だけですることは不可能ですから、最初の「おおまかな流れ」で述べたとおり、実験をさせてもらえるところを探すことになります。
そこでさせてもらえる実験というのは、先生が検証しているテーマの証明実験の一つであるはずです。(あるいは複数やらせてもらえるかもしれません。)
良いプレゼンテーションをするためには、まず自分たちが何の実験をやっているのかを理解しなければなりません。
あたりまえじゃないかと思われるかもしれませんが、今回自分たちがした実験は
・先生の研究テーマにおいて何を証明するためのもの
であって
・そのテーマは関連する研究分野においてどのような流れの中にあって、どのような意味があるのか
ということまで理解するためにはそれ相応の勉強が必要となります。
そのためには、その分野に関するレビュー論文(実験結果単体ではなく、複数の論文をまとめた総説)や、その先生が今まで出してきた論文のイントロダクションを読むことが、良い勉強になります。英語の論文を読む練習にもなるでしょう。
文法的に難しいことはまずない(単語は専門用語なので難しいですが)と思いますから、内容が頭に入らないのは背景知識がないことに原因があります。
いくらイントロダクションがその分野に知識がない人でも分かるように書いてあるとはいえ、学生レベルではまだ足りない部分も多いと思います。
そういった点は先生や先輩に聞きながら、教科書を読むなど各自が努力をしなくてはいけません。でもそういった苦労を乗り越えれば、自分の知的好奇心を満たしてくれる素晴らしい世界が待っています。
そうなれば、もうあなたは一生論文を読み続けることでしょう!?
・・・少し話がそれました。
結局BMCにおけるプレゼンテーションは「いかに自分たちの行った実験の重要性を分かりやすく伝えられるか」ということになると思います。
そのためには、まず自分たちがその重要性を認識しなければいけないということです。
また、いかに分かりやすく伝えるかは各大学によって違うでしょうし、ここでは述べません。大学ごとに代々引き継がれた得意技もあると思います。
それでは本番当日、皆様の素晴らしいプレゼンテーションが見られることを楽しみにしております
JIMSA Basic Medicine Section director
St. Marianna University School of Medicine 4th
Kazuhide Takada
BMC出場チームの代表者の方は、必ず指定のテンプレートを使用してください。テンプレートはこちらから、もしくは CP ML に添付させていただいたものをダウンロードしてください。
summary の書き方について、下に示しましたのでご参照ください。
尚、すべて英語で作成し、日本語に訳したものも併せて提出してください。各言語それぞれA4用紙1枚に収まるようにお願いします。
summary 記載方法
BMC summary
Title
メンバーの所属大学 / チーム名
メンバーの名前
Introduction
その実験を行った背景や意義など書いてください。
Materials and methods
実験方法などを分かりやすくまとめてください。また、従った倫理規約がある場合には、この部分に明記してください。例:All studies were conducted according to ~(従った規約の名前)
Results
実験結果を書いてください。
Discussion
実験結果から言えることや今後の展望などを書いてください。
Reference
引用文献がある場合は、適切なものを載せてください。
BMCは2名以上のジャッジにより、厳正に採点されます。出場されるチームの方は、採点基準も参考にして、発表の準備・練習に臨んでください。
<評価基準>
1.内容(計30点)
①テーマのオリジナリティ(5点)
ユニークな視点で研究テーマが設定されているものを高く評価する。
②アプローチのユニークさ(5点)
ありきたりの実験方法ではなく、ユニークな実験方法でアプローチしているものを高く評価する。
③学術性(5点)
実験や仮説が科学的に妥当で、優れているものを高く評価する。
④臨床への応用(5点)
考察が、実験結果を臨床に結びつけるものであるかを評価する。
⑤サマリー(5点)
研究内容がわかりやすく、適切な書き方で要約されているか、JIMSAから提示された書式に従っているかを評価する。(実験が延長し考察が間に合わなかった場合は、すでに出ている結果、予想される結果についての考察をする。)
⑥質問への回答(5点)
参加者(学生・Judgeを含む)からの質問に的確に答えられているかを評価する。英語で質問されたものに関しては英語で、日本語で質問されたものに関しては日本語で答えるものとする。
2.英語(計40点)
①文法(10点)
伝えたいことが伝わる文法かどうかを評価する。
②話し方(10点)
話す声の大きさ、速さ、的確さ、抑揚をつけた話し方、発音、イントネーションを評価する。
③単語、言い回しの選択(10点)
聴いている人(学生)に伝わる言い方、単語を使用しているかを評価する。
④原稿の暗記(10点)
Exellent (10-9点)、Good (8-6点)、Average (5-3点)、Poor (2-0点) の4段階評価を基本とする。
3.プレゼンテーション(計30点)
①分かりやすさ(10点)
プレゼンテーションを通して研究内容がいかにわかりやすく正確に発表されたかを評価する。
②スライド(10点)
スライドの構成、見やすさ、口頭で話した内容の理解につながるものであるかを評価する。
③姿勢(10点)
ジェスチャー、聴衆を見て話す、発表者として常識的のある真摯な態度で臨んでいるか、などを意識して発表しているかを評価する。
④その他 学会発表に求められる内容(減点法、最大10点減点)
倫理的配慮:倫理的配慮に欠けたら2点減点。
表やグラフのタイトルやナンバリング、縦軸・横軸のタイトルや単位の表記、有意差の表記も評価する。
サマリーやPower PointへのReferenceの記載など、基本的な配慮ができているかを評価する。
発表時間の厳守:30秒オーバー毎に1点減点。ただし、減点は最大8点まで。
<採点集計方法>
・内容①~⑥(30点):Dr. Judgeが担当:
1人のDr. Judgeがつける点数=5点満点×6項目(30点)=30点満点
・英語⑦⑧(20点):専門Judgeが担当:
専門JudgeはDoctorでなくともよい。
1人の専門Judgeがつける点数=5点満点2倍補正×2項目(20点)=20点満点
・プレゼンテーション、原稿の暗記⑨~⑫(40点):Dr.Judgeおよび専門Judgeが担当
1人のJudgeがつける点数=5点満点2倍補正×4項目(40点)=40点満点
・最終的な点数は以下の集計方法でつけ、順位を決定する。
(各Dr. Judgeによる点数の平均点)+(各専門Judgeによる点数の平均点)+「参加点」(10点満点)
<副賞>
・研究内容の得点が最も優れていたチームに「研究賞」を授与する。(30点満点)
<倫理面における配慮>
・研究において動物を使用した場合、動物愛護の観点から従った倫理規約をサマリーに明示すること。
・研究内容が人間に関連する場合、従った倫理規約およびしかるべき倫理委員会の承認を得たことをサマリーに明示すること。